介護の労災急増 労働局、注意呼びかけ‎

長崎県 朝日新聞 2/15

抱えて腰痛 浴室で転倒

県内の社会福祉施設で昨年起きた労働災害が、前年に比べ倍増した。原因は介護に携わる職員の腰痛や転倒。お年寄りを抱えたり持ち上げたりする時、腰を痛めるケースが全国的に増えているという。長崎労働局は施設で働く人たちに注意を呼びかけ始めた。

同局によると、県内の社会福祉施設で2010年に起きた労災は59件だったが、昨年は12月末の速報値で111件にのぼった。

そのうち35件は入浴介助中に滑って転ぶなどの「転倒」、30件は施設利用者を支えようとして腰を痛めるといった「動作の反動、無理な動作」だった。

厚生労働省によれば、全国の社会福祉法人で起きた労災は05年は3621件だったが、右肩上がりで増え続け、10年には5533件に達した。10年は「転倒」が1612件、「動作の反動、無理な動作」が1937件で、社会福祉施設で起きる労災の64%を占めた。

長崎市内のある特別養護老人ホームは、定員いっぱいの55人を抱える。平均年齢は89歳。常時80~100人が入所待ちをしている。

施設によると、5~6年前、20代後半の女性職員が持病の腰痛を悪化させ、労災認定を受けた。現在施設で働く男性介護員(26)も常に腰にコルセットを巻き、休みの日は整骨院に通っているという。

55人の入居者のうち男性は10人以下で、女性の割合が高い。トイレの付き添いなどは女性職員が担うが、歩くのが不自由なお年寄りの体を支えるのは大変な力仕事で、腰への負担が大きいという。

施設長は「女性の尊厳を守るためには、やはり女性職員の力も借りなければいけない。転落事故を防ぐためベッドの高さも低くしているので、体を起こす時の負担はより大きいかもしれない」と話す。

長崎労働局の井上健司健康安全課長は「高齢化が進むにつれ新規の施設も増えている。激務の中で、施設によっては十分な安全対策が取れていない可能性もある」と指摘する。厚生労働省は昨年末、施設で働く人向けに腰痛防止の手引書を作り、全国で配り始めた。「片足を少し前に出し、ひざを曲げてしゃがむように抱える」などとアドバイスしている。(河合達郎)

老人ホームや介護施設のお風呂の床が滑りやすいと、入所者や利用者の方々が危険なのはもちろんですが、意外と入浴介助している職員さんが滑って危険な思いをされている事が多いのです。

施設の職員さんから、「床が滑って危険なんです。」と、よくお電話を頂くのですが、管理者の方々には予算的なこともあり、なかなか聞き入れていただけないようです。

利用者はもちろん介助の方々も危険から守ってあげていただきたいものです。

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転ばぬ先の専門チーム

朝日新聞 2012年02月04日

◆鳥大病院、高齢者の院内事故対策に

ひとつ間違えば、寝たきりになったり命を落としたりと、重大な事故になりかねないお年寄りの転倒。高齢化に伴い増えているといい、命を預かる医療現場でも頭の痛い問題だ。鳥取大学医学部付属病院(米子市)では専門のチームを立ち上げ、院内での事故防止に乗り出している。

鳥大病院では、事故につながるおそれのある事例を報告するインシデントリポートは年間約2千件。そのうち転倒や転落はおよそ2割を占め、薬やチューブ類の扱いに関する報告に次いで多いという。

2010年度には450件以上の報告があった。その多くが高齢者。早朝や夕方にベッドからトイレなどに立つ際に転ぶ例が目立ち、患者がリハビリの一環と考え、無理に自力で立ち上がろうとして転倒することも多いという。

中には骨折で入院が長引いたり、寝たきりになったりすることもある。また、脳梗塞(のう・こう・そく)などを起こし、血液を固まりにくくする薬を投与されている患者は、転んだ弾みで脳内で出血した血が止まらず、死に至る危険性もあるので注意が必要という。

こうした事故を未然に防ぐため、鳥大病院は10年12月に「転倒・転落予防チーム」を結成した。リハビリテーション部を中心に、医師や看護師、薬剤師ら約30人が月に1度のペースで話し合いを重ね、認知症など転倒する可能性の高い患者への見回りなども始めた。実際に事故があった現場を検証し、原因の特定にも努めている。

こうした積み重ねから、立ち上がる際に支えとなるよう、ベッドと壁や簡易トイレの間隔を1メートル以内におく「1メートルルール」を徹底するなど病室のベッドの配置などを見直したほか、靴下のままスリッパを履くと滑りやすいなど、細かな注意点を記したマニュアルも作り、すべての病棟に配っている。

取り組みから1年余りで、効果も出始めている。今年度の事故件数は昨年11月末現在で292件。前年度同期に比べ38件減っている。また入院患者に占める転倒転落率は、チーム結成前後で、0・22から0・19に改善している。

チームリーダーを務めるリハビリテーション部の萩野浩部長は「65歳以上の高齢者の場合、通常10回の転倒で1回程度骨折する。いろんなことを想定しながら事故防止に努めたい」。また副リーダーの前田陽子看護師長は「これまで情報が各病棟で止まっていたが、チームが出来たおかげで共有することができる。病院全体が事故を防ぐという意識で仕事が出来るようになった。ベッド近くに支えを置く『1メートルルール』は、家庭での転倒防止にも役立つ」と話している。(宋潤敏)

先日もこのブログで紹介させて頂いた、由布市湯布院町の湯布院厚生年金病院の【患者の転倒「待った!」予防チームを結成】と同じ取り組みをやられています。

こういった事例や取り組みがもっともっと普及して、少しでも転倒による事故が減少する事を心から願います。

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